「ご挨拶が遅れましたが、私、上条皐月と申します」
「……ということは」
「はい、胡散臭いセミナー講師、上条勝利の母です」

ウワアッ! 最近、驚きの連続ばかりだ。そのうち心臓麻痺でポックリなんてことになりそうだ。

ドキドキする胸を押さえ、「すみませんでした!」と頭を下げる。

「あら、何を謝っているの?」
「だって、息子さんのことを胡散臭いなんて言って……」

ウフフと笑みを浮かべ、「だって、本当に胡散臭い子だもの」と皐月さんがウインクする。

「ところで、貴女は?」
「あっ、申し遅れました。私、下条冬夏と言います」

エーッと今度は皐月さんが目を丸くする。

「下条夏美の娘さん? 冬夏ちゃん!」
「はい」

キャーッと奇声を上げたかと思うと、ギュッと私に抱き付き、叫ぶ。

「お嫁ちゃん、見っけ! お久し振りねぇ」

嫁? うわぁ! 信じ込んでいる。
イヤイヤ、それ大きな間違いだし。

「私、コッソリ貴女に会いに行こうと思って電車に乗ったの」

皐月さん曰く、本日のお出掛けはお忍びだったようだ。