あの短時間で、もう夢を見直したの?
「それから?」と上条勝利が楽しそうに、話の先を促す。

「はい、父の会社を手伝います。兄のセカンドになり、芦屋出版を世界で名高い出版社にします」

ほほう、と上条勝利と木佐社長が顔を見合わせ、ニッと口角を上げる。

「でも、浩二君はセカンドで満足なのかい?」
「満足じゃないけど……そこから更に成長できると思うんです」
「……そう思うんだ?」
「はい!」

躊躇いの無い真摯な瞳が上条勝利を見つめ返す。

「君はこの後のセミナーを受けなくても、既に富豪への道に進んでいるね」

「あっ、だったら返金しなくちゃ」と木佐社長の言葉に、「そんなぁ」と芦屋君が顔を歪めると、その場が笑いに包まれる。

天真爛漫代表みたいな子なのに……メチャクチャしっかりしている。高校を卒業したばかりなら、十七・八歳? 五つも年下なのに……何というか、凄い! 流石、東大生?

「下条冬夏さんも、僕と同じ年ぐらい?」

突然、矛先が回ってきた。

頬張りかけた前菜“鴨のテリーヌ”を口元に置いたまま、「女性に年を聞くのは失礼ですよ。年上です」と淡々と答え、パクンと口にする。

ホォとピンクの溜息が出るほど美味しい。