いつの間に! 上条勝利と木佐社長が前を歩いていた。そして、彼らに纏わり付いているのは……あの彼女たちだ。順番でいったら、とうの昔にレストランに着いているはずなのに……。

しかし、それよりも日下部さんは、ただ可愛いだけの女性ではないようだ。

「そんな純粋な目で見つめないで……居心地が悪くなるわ」

日下部さんが苦笑する。どうして?

「だって、私も同じ穴のムジナ。そんな一人だから……」

エッ! どういうこと? 上条勝利に取り入ろうとしているということ? 恋人がいるのに? それは衝撃の事実だ。

「私の家、ちょっと名の知れた料亭なの。『割烹柊』って知っている?」

エエッ! 知っているも何も、老舗中の老舗じゃないか!

「当然です。知っています」
「ありがとう。私はそこの四女なの」

どうりで、所作が美しいはずだ。
それにしても、四女って……この少子化の中で、下条家も日下部家も……偉い!

「上条家は古くからのお得意様で、父母は上条家との縁戚狙いで私をセミナーに参加させているの」

なるほど、先ほどの発言は……このことだったのか。

「厳正な審査でセミナーの参加者を決めている、と謳い文句で言っているけど、本当は違うのよ」