私、今日からお金持ち目指します？

「どうです？　わずかな時間で、先ほどの夢が、叶わぬ夢から現実可能なものになりました」

本当だぁ。目をパチクリとしながら上条勝利を見つめる。

「あっ、言っておきますが、寄付を募るのも、財団法人を作るのも、容易ではありません。何かをする時、また、新たな困難が生まれます。人はそれを“壁”と言います。壁をどう打ち破るかを都度考え、諦めなければ夢はきっと叶います」

「なら、富豪にならなくても、このケースの場合、他人の懐を当てにすればいいのでは？」

痩せた研究者風の男性が発言する。

「そうですね。でも、例えば、彼女がこの経験を本にし、それがベストセラーとなったら？　彼女は、もう、施設の職員という立場だけではなくなるのです。そうなると、もっと活動がしやすくなる。でしょう？」

研究者風の男性がウーンと唸る。

「ヒエラルキー……富裕層ピラミッドというものがあります。ご存知ですか？」

上条勝利の視線が会場を見渡し、ウンと一つ頷く。

「この話はまた改めてしますが、ピラミッドの頂点とその下の層は全てにおいて違います。寄付の額もね」

魅惑的なウインクを飛ばすと、上条勝利は、「ということで」と話を締めくくる。