私、今日からお金持ち目指します?

「億の金を稼げる企業家になったとしたら、君はその後、何をする」
「そりゃあ、高級車を買って、高層マンションに住んで……」

「ストップ」と上条勝利は唇に長い人差し指を当て「シーッ」と少年の言葉を遮る。

この男、いちいち所作がカッコ良過ぎる。

「結論から言おう。富豪になりたいのなら」

彼が会場を見渡す。

「大勢の人を幸せにすることだ。当然、そこには自分自身も含まれる」

はい? どういう意味だ。

私だけが理解不足なのか、と横を見ると、隣の男性も彼女と顔を見合わせ、クエスチョンマークを浮かべている。

「おそらく、この会場の全ての人が今の言葉を理解していないだろう。もし、理解していたら、僕のセミナーに来ていないと思う」

そうかもしれない。

「例を挙げよう。芸能人だ。歌手や俳優、さらにお笑い芸人は、歌や演技で大勢の人を救い笑わせ、喜びや幸せを与える。そう思わないかい?」

確かに。だが、芸能人が全員、富豪? それはない!

「僕は芸能界のことは知らない。だが、ハリウッドの俳優たちは一本の映画で、数億以上の稼ぎを得る者もいると聞く」

それは聞いたことがある。だが、ハリウッドの俳優もまた、全員が全員、富豪ではない。