私、今日からお金持ち目指します?

小さな溜息を一つ吐き、おもむろに言う。

「考えたのですが、私には現在、夢はありません。それに気付きました」
「現在ということは、過去はあったのだね」

鋭い人だ。

「はい、イラストレーターか漫画家になりたいと思っていました」
「なるほどね」

上条勝利がニヤリと笑い言う。

「君は自ら富豪への道を絶った、ということか」

はて? どういう意味だろう。
理解できない言葉にキョトンとしていると、上条勝利が話し出す。

「皆さんに夢を聞いたのは、何もその夢に文句をつけるためではありません。ですが、その夢では『富豪への道』は遙か遠く、絶対になれません」

うわぁ、言い切っちゃったよ。

「おそらく、発言者以外の方々も同レベルの夢だと思います」

「ハイ」とまたあの男子が挙手する。
「どうぞ」と上条勝利が微笑む。

「僕の夢はミリオンダラーを稼ぐ企業家です。それも同レベルですか?」

この子、いったい幾つだ!

「なるほど、それは果敢な挑戦だ。だが、そうだ。同レベルだ」

男子の顔が強張る。

「僕の回答が不満かい?」

フッと口元を緩め、少年に訊ねる。