私、今日からお金持ち目指します?

「私がこのセミナーを受講したのは、私自身を高め、稼ぐためです。夢は自社の社員たちに、今以上の豊かな生活を与えることです」

「なるほど。では、次、貴女」と指されたのは、中央に座る眼鏡を掛けたインテリっぽい女性だった。

「私の夢は、私が勤める施設の子供たち全員を大学に行かせることです。そのためにお金持ちになりたいと思い、このセミナーを受講しました」

「なるほどねぇ。では、君は?」と私の隣の男性が指される。もしかして、セーフ?

「俺の夢は彼女を幸せにすることです」と隣に座る女性を見る。どうやら二人は恋人同士のようだ。

「彼女のために、貴方のような富豪になりたいです」

切羽詰まった思い? そんなものが彼から滲み出ている。何か事情があるのだろうか?

「僕のように……ねぇ。では、ついでだから、彼女にも聞いておこうか」

「私の夢は彼のお嫁さんになることです。実は私、ここには自分の意思ではなく、両親の指示で参加しました。すみません」

彼女が深々と頭を下げる。

「ご両親に……ということは、下条冬夏さんと同じ、ということですね。では、下条冬夏さんの夢はなんですか?」

神様の意地悪! 当てないでって言ったのに……。