私、今日からお金持ち目指します?

私は元を取らなければいけないのだ、と早速ファイルを開く。
そこには『富豪への道(1) あなたの夢は何ですか?』の文字。

「ここに居る人たちは、大なり小なり将来に夢を持ってセミナーに参加した。だよね? 五分設けるので、その夢を、まずそのページの回答欄に書いて下さい。では、始め!」

夢? 昔はあったけど……それに、このセミナーに参加したのは、夢ではなく店を立て直すという目的のためだ。

ウーンと頬杖を付いて一生懸命考えるが、全く思い浮かばない。
改めて知った。私って夢のない人間だったのだ……と。

「じゃあ、いいかな」

上条勝利が声を掛ける。五分経ったのだろう。
会場のあちこちから「ハーイ」と返事が聞こえるが、私は一文字も書いていない。

「では、何人か聞いてみよう」と上条勝利が私の席から一番遠い最後尾に座る、恰幅のいい男性を指す。

指されませんように、と願いながら発表者の夢に聞き入る。