「そして、俺は欲しいものなら何でも手にしてきた。だが……」

その言葉で胸の高鳴りがスーッと冷め、また、怒りし獅子が目を覚ます。

「だが、何だと言うのですか!」
「君の心だけは、なかなか手に入らない」

当然だ!

「俺は、どんな手を使っても、というやり方は好きじゃない。それでは相手を幸せにしないからな。だが、君に関しては、どんな手を使っても手に入れたい」

そんな物騒なことを言い出す始末だ。

「しかし、それでは嫌われてしまう」

分かっているではないか!

「今まで俺は『富豪への道』を順調に歩んできた。そして、大勢の人を幸せにしてきた。それが喜びでもあった。しかし、気付いたんだ。それではいけない……とねっ」

否、それでいいのでは?

「俺自身が他の誰よりも幸せにならなくては、より多くの人を幸せに出来ないとねっ」

前を向いたままの上条勝利が言う。だが、ハンドルを握る手に力が籠もっているのがよく分かる。

「そして、そう思った時、君と再会した。運命だと思った。初恋の君とようやく巡り会えたのだからね」

そうだった。祖父が亡くなり、彼の言うヒエラルキーに張られたシールドが邪魔をして、あれ以来、パーティーに呼ばれることはなくなった。私としては好都合だったが……。

「そうこうしているうちに、俺はアメリカだのイギリスだの、留学を繰り返し、日本にいなかったし」