私、今日からお金持ち目指します?

「が、反面、おもしろい奴という印象も受けた」

おもしろい? 真面目だとかオタクだとか、辛気臭い奴、と思われるのは常だが、おもしろいなんて言われたのは初めてだ。

「セミナーでどれだけ成長するか……そうだ、君を観察対象にしよう」

途端に会場がざわめく。

「セミナーに来る楽しみが増えた、ありがとう」

何となく嫌味ったらしい言い方だ。

「で、君の名前は?」

もしかしたら、物凄く面倒くさい人に目を付けられた?
でも、講師の先生様だ、ここで拒否は許されない。しかたなく名を名乗る。

「しもじょうとうか……上下の下に上条さんと同じ条。冬と夏で『とうか』と読みます」

「下条冬夏……」

上条勝利の頭の中で漢字に変換されたようだ。

「次回も僕を驚かすようなおもしろい事を期待している」

イヤイヤ、そんなの待たれても無理です。
心の中でブルブルと首を横に振る。

「ということで、イントロデュースはこの辺にして、一回目のセミナーを始める」

上条勝利の顔がキリリと講師の顔に変わる。
数は少ないが、会場にいる女性たちからピンクの溜息が漏れ聞こえる。

確かに、今一瞬、カッコイイと思ったが……。
私はそんなことに構っていられない。

「机の上にファイルがあると思う。それを開いて」