私、今日からお金持ち目指します？

それはどういう意味！　それではまるで私が、富豪になりたくてこの身を彼に捧げるみたいじゃないか！

とうとう私の怒りは沸点を超えた。

「――なら、私は『富豪への道』などというものを目指しません！」
「でも君は店を立て直したいのだろ？」

間髪入れず彼が言う。
それはそうだが……でも……。

「貴方に頼らなくても……」
「――と言いながら、随分弱気な物言いだね」

くそぉぉ！　言い返せない。

「まぁ、君が何と言おうが、『梟（Hukuro）』は続けてもらわなきゃ。母が怒り狂うからね」

上条勝利曰く、皐月さんは我が店の大ファンだそうだ。母と再会してから、毎日、三時のおやつは、我が店のケーキやクッキーだそうだ。

「そう言えば、冗談か本気か知らないが、『梟（Hukuro）』が閉店したら、うちのパティシエとして迎える、と母が言っていたな」

――まさか、父と皐月さんの間でその話が進んでいるとか？　母の口にした『私たちの代で閉店』という言葉を思い出す。

「貴方は何か知っているの？」
「否、俺は梟の存続には一切関与していない。ただ……俺はお前が欲しいだけだ」

ドクンと胸が音を立てる。