私、今日からお金持ち目指します?

結局、薬指に輝く指輪のペアだというメンズリングも購入した上条勝利。「指輪なんて嵌めたのは初めてだ」と、憮然と言うものの……どことなく嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか?

『ジュエリー・琥珀』を出ると、皐月さんが私たちをディナーに誘った。父母は一も二もなく二つ返事で了承したが、上条勝利は「僕たちはこれで」と私の了解もなく断ってしまった。

「どうしてご一緒しなかったのですか! せっかくのお誘いだったのに!」

三人が車で立ち去るのを涙目で見送った後、湧き上がる怒りを堪えながら訊ねる。

「何だ、中華が食べたかったのか?」

助手席のドアを開けながら上条勝利が問う。
あれっ? 上杉さんの姿がない。故に、運転手席に座ったのは上条勝利だ。

「――上条さんって運転できたのですか?」
「本当に君は失礼な奴だな、十八歳の時、ストレートで取得した僕に向かって」

ムッとしながら彼がアクセルを踏む。

「ちょっと、安全運転でお願いしますよ、まだ、死にたくありませんから」

シートベルトをギュッと握り締め言うと、「当たり前だ。初夜も迎えていないのに、死なせはしない」と訳の分からない同意をする。その言葉を聞かなかったことにして、私は先程の返事をする。