私、今日からお金持ち目指します?

「君はこっちの方が好きそうだな?」

上条勝利が言う。どうして分かったのだろう。それは、多くの指輪の中で、唯一、目を惹いた指輪だった。

「大江戸さん、家宝はそのまま展示しておいて下さい。重要なシーンの時にだけ、彼女に嵌めさせますから。今日はこちらを頂きます」

「あら、本当にお預かりしていて宜しいのですか」と大江戸さんが嬉々とする。
「ええ」と上条勝利は返事をし、「冬夏」と私に向き直る。

「仕方がない。三ヶ月だけ待ってやる。恋人期間? それがやりたいのだろ?」

否、それを言ったのは皐月さんだ。私は婚約自体が……と、これでは堂々巡りだ。仕方がない、と私はアンガーコントロールすべく、フーッと深く息を吐き、「お試しということで」と譲歩する。

そうだ、私は大人だ。こういう輩には、こちらから歩み寄った方が、事がスムーズに運ぶ。

「お試しねぇ、まぁ、いいだろう。だが、その指輪は嵌めておけ、ステディーな関係? それを知らしめなくては!」

知らしめる? 誰に! でも……ステディーと言うなら、引きこもりの私より……。

「だったら、上条さんだって、指輪……」
「俺にも嵌めろと?」

間髪入れず上条勝利が突っ込む。

「まぁ、お仲がよろしいこと」と大江戸さんが嬉々とする。

「それでしたら、メンズはこちらになります」

――もしかしたら、大江戸さんって、物凄く商売上手?