私、今日からお金持ち目指します?

完璧に置いてきぼりをされた私は、ここでようやく我に返る。

「主役って、私、プロポーズをお受けした覚えがないのですが! いったいこれはどういうことですか!」

もう我慢できない! 私を無視して何を勝手なことを言っているのだ!

「まぁまぁ、それより、これなんかどうだろう? 冬夏の指に似合いそうだと思わないかぁ」

私の言葉など聞こえていなかったように、間延びした父の言葉がみんなに問う。

そして、父が指した先には……七色の光を燦々と放つ、大きなダイヤが乗った指輪。これが私に似合う? 全く、何を言うだ! これが似合う指は、ハリウッドの女優ぐらいなものだ!

「あら、それもいいけど、私はこちらのラブリーな、ピンクサファイヤとダイヤのコラボが素敵な指輪がいいわ」

母は瞳をキラキラさせ、ウットリとその指輪を見つめる。
欲しいのなら、父に買ってもらえば、と言いそうになる。

その時だ、チッチッチッと皐月さんが人差し指を振りながら、「そんなので満足していちゃダメよ」と言い、店員さんに向かって、「例のアレ、出してもらえる」と指示を出す。

夜会巻きヘアの見事な店員さんが上品な微笑みを携え、「了解致しました」と一旦奥に引っ込む。そして、しばらくして赤紫色のリングケースを恭しく両手に持ち戻ってきた。