「上条さん、ありがとうございます! 私、あの場で例のお話をさせて頂いたら、『財団設立の折りには、是非、声を掛けて欲しい』と言われました。理事になるからと……」

巴女史が涙ぐむ。
――嘘っ! そんな話があの場で進んでいたなんて……もう、ビックリだ!

「それはよかったですね。ご招待した甲斐がありました」

上条勝利が満足そうに言う。

「ですが」と突然、彼の顔が厳しくなる。

「彼らはとても恐ろしい。一旦、相手に見切りを付けると、一生振り向いてもらえない。幸運の神に後ろ髪がないのと同じです。ですから、気を引き締めて接することです。但し、卑屈さはNGです。彼らは卑屈な人間を嫌います」

じゃあ、どうすればいいのだ!

「凜と背筋を伸ばし、自分をシッカリ持つことです。愛想笑いはいけません。簡単に見破られてしまいますから」

「うわぁ! 俺、ずっとしていた」

山下さんがムンクの叫び顔になる。
上条勝利がクスッと笑い、言う。

「初体験だったでしょうから、まぁ、そうでしょう。彼らを前に、一長一短でできるものではありません。常日頃から、セミナーで言ったことを実践してこそです。ただ、セミナーでお話ししたのは、ほんの一握りのお話です」

――それでも、巴女史のように、上条勝利の助けがあったら、六回のセミナーでも富豪への道が切り開けかけている……彼って……やっぱり凄いのか?

「だが、多くを語ったとしても、セミナーで言った基本ができていなければ、先日見たあの世界の入り口にも立てません。だからです。くどいようですが、富豪になりたかったら、今回のセミナーで話した内容を実践して下さい」

「実践すれば、自ずと道が開け、立てるのです」と言い、また、足を踏み鳴らし、「自分の足で!」と言う。