「とにかくです、お金は無いよりは有ったほうがいい。そして、お金は増やすために賢く使うことです。賢く使うとは、多くの人を幸せにするために使うということです。そうすれば自ずと、お金に囚われることのない自由人の仲間入りになるでしょう。ただし……」

上条勝利が言葉を切り、ニヤリとする。悪い笑みだ。

「自由人ほど、自分に重責を負わなければなりません」

はて、どういう意味だろう?

「自由なのに責任を負う? 矛盾していませんか?」
「していません」

上条勝利が迷いなく答える。

「自由人ほど自分に対する規律が厳しい、と言ったほうが分かり易いかもしれません」

「それはですね」と上条勝利がにこやかに言う。

「時間にも、お金にも、人にも、何にも縛られないからです」
「すみません、全く意味が分かりません」

巴女史が情けない顔をする。同意だ。
上条勝利が一つ頷く。

「先程も言いましたが、人間は基本、自堕落にできています。自分を甘やかせたい、と常に思っています」

「あぁぁ、分かる気がするぅ」と怜華嬢が悲鳴に似た声を上げる。

「ダイエットがそう! 自分を甘やかせると、すぐに太っちゃうのよね」
「分かる! 毎日のエクササイズをサボると、体がすぐになまっちゃうもの」

なるほど、彼女たちの美しさの裏には、類い稀無い努力があったのね、としみじみ感心する。