そりゃあ、お金があるに越したことはないが……世の中、それだけではないのでは?

「そして……マネーを持たない者ほど、お金が全てじゃないわ! などと豪語する」

私のことを言っているのだろうか、と下を向き、顔を隠す。

「それは、有り余るお金を持ってから言え、と僕は言いたい。有り余るとは富豪並みにです。人間は自堕落にできています。ちょっとマネーを持つと、もう金持ちになった気になり、無駄に使い始めます。そして、気付いた時には……」

ヒューと言いながら、人差し指を上から下に向けて下ろし、「落下の一途を辿ります」と言う。

「しかし、ここで気付けば救いはあるのですが、本当に人間とは愚かな生き物です」

上条勝利が大袈裟な溜息を吐く。

「一度贅沢を覚えると、質素な生活になかなか戻れない。戻れないから借金をしてまで、以前の暮らしを続けようとする。あっ、僕は別に借金が悪いことだとは言っていません」

でも、借金はあるよりない方がいいのでは?

「適度な借金は、労働の原動力になります。例えば、家のローンのため、一生懸命働くとか? 僕は城を買ったがために一生懸命働いている奴を知っています」

城……キャッスル? イヤイヤ、それ、次元が違いすぎるから!