そんな屈辱的な時間を二時間近くも過ごし、また私は上杉さんの運転する車の中にいる。

「食事にはちょうどいい時間だな」
「だからですね、もう帰ります!」
「そんなにキレイになったのに?」

そう、私はブティックで、買ったばかりの服に着替えさせられた。おまけに店長さんという人が、メチャクチャ面倒見がよく、「せっかくお洒落をしたのだから」と美しくヘアメイクまでしてくれた。

「行き先は、創作割烹『ミヨシ』と言っても、帰る?」

ミヨシ! 超美味と評判の店だ。グルメガイドが選ぶ、『一度は行ってみたい店ランキング』には必ず上位に入っている。

デザートも至極の味らしい。思わず喉が鳴る。

「どうする、帰る?」

クーッ、悔しいが美味なる物には逆らえない。

「――ご相伴に与ります」
「なかなか素直でよろしい!」

上条勝利がクッと口角を上げ、私の手を取り、手を繋ぐ。それも恋人繋ぎと言われる繋ぎ方で!

「なっ何をしているのですか!」
「君が逃げないようにね」

車の中にいるのに、どうやって逃げるのだ、と思っていると、正面を向いたまま、上条勝利が、「――冬夏、悪かった」と呟くように謝る。

ん? 突然なんだ?

「俺、そんなに君を傷付けたなんて知らなかった」