「なら」と目前に次々に置かれる商品の中から、ネイビーブルーのカーディガンを選び、「これを頂いて帰ります」と財布を取り出す。

「お幾らですか?」

ハイ?と驚いたのは店員だった。
「上条様?」となぜか私ではなく彼を見る。

「流石だろ? 彼女は冗談が上手なんだ」

上条勝利がにこやかに笑みを浮かべ、私の肩を抱く。

「まぁ! 本当に、チャーミングが方ですわ」

ホホホと笑い、「では、このカーディガンに合わせ、ワンピースと靴と鞄、それにアクセサリーを揃えましょう」と言う。

ちょっちょっと待って! 誰もそんなことを言っていないし、望んでもいない。なのに……。

「ああ、そうしてくれ」と上条勝利が勝手に宣う。

反抗しようにも、彼に腰をしっかり抱かれているので身動きが取れない。おまけに、耳元で彼が囁いたのだ。

「僕に恥をかかせないでくれ、万が一、大声で何か叫べば、今ここで君にキスをする」

まさかでしょう、と思うが、彼ならやりかねない。
コンニャロと思いつつも何もできない。本当、最低な男だ。