「なぜ? 貴方はそれを聞くのね! 覚えていないかもしれないけど、昔、貴方は私を酷く侮辱したの!」

上条勝利が怪訝な表情で「侮辱?」とリピートする。そして、しばらく何か考えているようだったが、急に「あー、あれか?」と笑い出す。

「何、何なの!」

意味が分からない。

「もしかしたら、僕のバースデーパーティーの日のこと?」

あれ? 覚えているの……?

「君はいつ思い出したんだ? セミナーの初日は初対面のようだったし、母と会った日か?」

「そうよ」と言えば、上条勝利は、だと思ったと言う。

「電光掲示板の前で再会したとき、俺はすぐに君だと分かった。なのに、君は知らん顔をしていた。だから、腹が立って、ちょっと苛めてみた」

ハァァァ! ちょっと苛めてみたですって! 子供か!

「言っておくが、幼少のみぎり、君に放った言葉は、今回と同じだ。あのとき、俺は君に一目惚れしたんだ」

ハイ? ちょっと待って下さい。一目惚れ?

「でも、かなり酷い言葉を吐かれていましたよ」
「好きな子ほど苛めたくなる年頃だったんだ。まぁ、今もだけど」

好き? あの酷い仕打ちが愛情の裏返し……どれだけ捻くれ者なんだ!