「確かに、君には好きになるなと言ってあったが、それはセミナーが終わるまでだ。講師に恋をすると身が入らないからな」

ハァァァ! そんな理由? 何と自分勝手な……というよりも、私が彼を好きになると言う前提?

「ご心配無用です。恋とかありませんから」

フッと上条勝利が妖しい笑みを浮かべる。

「そう言っている奴ほど、心の奥底で相手を求めている。自分の本当の気持ちに、君が気付いていないだけだ」

「それに」と上条勝利が私の頬に手を添える。

「君は第一回目のセミナーから、ずっと俺を意識しているだろう?」
「そっそれは!」
「何だと言うのだ?」
「……貴方が私を落とすとか言うから……」

「ほらね」と勝者のように「君は自分が思っている以上に、僕のことを考えている」と魔法を掛けるように耳元で囁く。

「それはね、もう君が僕を好きだって言うことだよ」

好き? ハッと視線を上げ、ギッと上条勝利を睨む。

「好きどころか、大っ嫌い!」

私の声が大きかったからだろう、言われた本人である上条勝利もだが、店員さんの肩もビクッと揺れる。

「――それはなぜだ?」

上条勝利が重い声で訊く。