「デートって、私とですか?」
「何を呆けたことを言っているのだ。君とじゃなかったら、誰とだと言うのだ!」
「さぁ、誰でしょう?」

「もういい! サッサと乗れ」と上条勝利にグイッと押され、後部席に乗せられる。

「勝利様を揶揄うなど、なかなか頼もしい楽しいお嬢様ですね」

運転席で上杉さんが声を押し殺して笑っている。

「上杉、覚えていろよ!」

どうやら上杉さんには、上条勝利も形無しのようだ。

「で、どちらに参ればよろしいのでしょう?」

含み笑いを浮かべながら上杉さんが訊ねる。

「クソッ」と小さく舌打ちし、上条勝利が「モード・シャルルに行ってくれ」と言う。

モード・シャルル? どこかで聞いたことのある名だな、と思っているとホテルから十五分ほどのところで車が停まる。

私でも知っている高級ブティックが並ぶ通りだ。その一軒に上条勝利が私を誘う。

「まさか! ここでプリティ・ウーマンのリチャード・ギアを気取ろうって言うんじゃないでしょうね!」

フンと彼が鼻を鳴らし「何年前の映画の話をしているのだ!」と言う。

年代は関係ない! 良いものは、いつの時代も良いのだ、とリバイバルで観た映画を思い出す。