言い淀んだ挙げ句、疑問形? きっと彼は何も考えていなかったに違いない。セミナー中はあれほど切れ者なのに……。

「プランがないのでしたら、ここでお話をお聞きしますが」
「ここは、もう時間だから居られない」

「とにかく、行くぞ!」と私の手を引き、会議室を出る。
そして、上条勝利が向かった先は……地下一階の駐車場。

「勝利様、どうぞ」
「上杉、彼女は下条冬夏さんだ」

もしかしたら、この人、“運転手“兼“執事”と言われる人ではないだろうか?

「俺の妻になる女だ、よろしく頼む」

ハァァァ! 何を言う! アングリと口を開けていると、上杉さんが深々と頭を垂れる。

「それはそれは、かねがね奥様から、お噂は伺っておりましたが、実に可愛らしいお嬢様ですね。上杉謙司と申します。よろしくお願いします」

かねがねとは? 奥様とは……皐月さん? 全く、どんな話をしているのやら!

「五時にもなっていないな、食事の前にショッピングにでも行くか?」
「だからですね、お話があるのなら、サッサと言っちゃって下さい」
「お前なぁ、人がデートに誘っているのに、何がサッサだ!」

ムッとする上条勝利を、マジッと見つめる。