「君たち、最高だ! 僕はシンプルライフの一環で断捨離を勧めたのだが、君たちはその先まで考え、進んだ。実にスピーディーにね! それが大切なんだよ」

上条勝利が微笑みを携えたまま、会議室を見回す。

「セミナーも残すところ後一回。僕は、貴方たちが、たった六回のセミナーで『富豪への道』をどこまで進めるだろうと思っていました。最悪、スタートラインにも立てないかもしれない、とまでね」

「でも」と上条勝利が顔を引き締める。

「貴方たちは私の思いを最良の形で裏切ってくれました。心からお礼を言います。ありがとう」

うわぁ、謙虚な上条勝利など、気持ち悪い。背筋に寒さを覚えブルッと震える。

「やっぱり出来た人だよなぁ」
「本当ねぇ」

でも、周りの評価は私と全く違っていた。日下部さんと山下さんにチラリと視線を向け、すっかり毒されているなぁ、としみじみと思う。



「ちゃんと残っていたな。感心感心!」

五回目のセミナーが終了しても、私は言われた通り、会議室に残っていた。

「じゃあ、行こうか」
「どこへですか?」
「――食事?」