私、今日からお金持ち目指します?

普通の女子は、こんな感じなのだろう。しかし、私は……と自分の拘りを思う。

拘りかぁ……。

寝る時はスウェットじゃなく、必ずパジャマに着替えるとか?
お金を減らさないため、毎月一日は絶対に財布を開かないとか?
太らないために、寝る前三時間は飲食しないとか?

何だか考えれば考えるほど、ショボいものばかりだ。

拘りを捨てるかぁ、と思い、アッと思う。

そうだ、幼少の折りに傷付いた私の気持ちを捨てよう。相手が覚えていないのに、拘っているのもバカバカしい。そう思うと、心を覆っていた厚い氷がスーッと溶けていくような気がした。

ボールペンを持つと、『富豪への道(5) シンプルな生活を心掛ける』の文字の下に力強く『生意気なクソガキの言葉は忘れる!』と書く。

書き終わると、どこか晴れ晴れとする。

「生意気なクソガキとは誰のことだ!」

――と思ったのに……上条勝利が上から覗き込み、問い詰めるように訊く。

「ガキ……男だな! どこの男だ!」

クソガキと書いてしまった以上、貴方のことです、とはこの場で言えない。
黙っていると、彼が腰を折り、耳打ちする。

「では、後でゆっくり聞かせてもらう」