「皆さん、先日はお疲れ様でした」

五回目のセミナーが始まった。いつもの如く、上条勝利の爽やかな挨拶から始まる……が、会場内の空気が重い。ドンヨリと淀んでいるのは、参加者全員の覇気がお留守だからだろう。

「どうされました? 元気がないようですが」

上条勝利がニッコリ微笑む。

普段なら、その笑みに応え、ここで怜華嬢と美麗嬢がキャーッと叫ぶのだが、二人もどうやら未だ夢うつつのようだ。

「――上条さん、俺、なめていました。半端なかったです」
「私もですわ」

芦屋君とマダム京極が揃って、疲れたような声を上げる。

「心身共に健康でいることが、『富豪への道』に通じる、という上条さんのお言葉、肝に命じました」

マダム京極の言葉に、全員が頷く。

「それはよかった。実地研修に参加して頂いた甲斐があったというものです」

上条勝利が会議室を見渡し満足そうに笑むと、怜華嬢と美麗嬢が溜息交じりに言う。

「だから私、トレーニングを週一日から週三日に増やしました」
「私はダンスとヨガに申し込みました」

「ねぇー」と二人は頷き合う。

驚いた! この二人、お嬢様然としているが、意外に骨太で真面目じゃない?

「そうですか、それはイイ!」

上条勝利の褒め言葉に二人が嬉々とする。こういうところは代わり映えしないが……。