他に客はいなかったけど、彼女じゃないから隣の席には座れない。
そばで見てるほど照れ臭いもんはない。
「 どれくらい切る?」
「 短く、ベリーショートでも… 」
は!?
「 あー、それダメ!せめてボブ!絶対似合うから 」
って… なんで俺が決めんだよ。
「 春賀君… やっぱあんたは美容師になりなさい。 うん、私もボブに賛成よ 」
「 あ… じゃあ彼の言う通りにします 」
は~……… 良かった……
って、だから!!
俺がホッとすんなっつの!!
あー、くっそ……
祐香の背中に流れるようにさらりとしたストレートの髪が、切られていく。
意外と辛い。
失恋が引き金だと知ってるから。
あんなに静かに泣く人を初めて見たから……
短くなる髪……
やっぱり、俺は祐香を抱きしめてやりたいって思ったんだ。



