「大学、無事受かったんだってね」
「うん、沢藤から聞いた?」
「こないだね」
「私と真紀は心配なかったんだけど、沢藤が成績足りなかったみたいでね。でもなんとか試験通って良かったよ」
「沢藤さん野球ばっかだったからなぁ」
「亮介も油断してると沢藤みたいになるよ」
「まさか。俺、意外と成績いんだよ?」
くすくす笑う美奈子は、雰囲気を変えて明るくなった。
そして、周りがびっくりするほど綺麗になった。
俺から言わせてもらえれば、元々美人だったけど。
カラカラと自転車の回転する音も、こうやって美奈子の隣を歩くことも、久しぶりだった。
「ねぇ、亮介。もうすぐ卒業式なんだ。高校生活なんてあっという間だね」
「あと一週間だよね」
雪が降る頃までには――。
美奈子を振り向かせたい、そう思ってたけれど、いつの間にか雪はとっくに降っていた。
道路の端には、まだ溶けてない雪が少しある。
俺が色んなことを言い訳にして行動に移せなかった間に、季節はどんどん過ぎていた。

