「何うじうじやってんのよ!ちらちら見て、声かけようか迷ったりなんかしてっ!情けなーい!」
痛いとこ全て突いて、挙げ句とどめを刺すぞと言わんばかりの里奈ちゃんが仁王立ちですぐ後ろに立っていた。
「……えっと?里奈ちゃん?」
「情けないのよ!何も行動に起こさないなんて!亮介ばかみたいにポジティブだったじゃない!前向き過ぎるくらいで!そういうとこはどこに行っちゃったの!?」
「……えっと?」
「全く、こんなの相手にしてたなんて最っ悪!さっさと他に男探そっと。あー、時間ムダにしたっ」
里奈ちゃんの罵倒に、思わず笑いがこぼれた。
確かに、何やってんだ俺。
うじうじ考えて答えが出る問題じゃない。
まずはしっかり、もう一度伝えないと。
何もかも、それからだ。
「何ニヤニヤしてんだよ、もうすぐ始まるぞ」
いつの間に隣にいたのか、沢藤さんが言った。
「こんなとこで何してんすか?運動不足組はもっと後ろなんじゃ?」
「引退しても元野球部、10位以内に入らないと監督にどやされんだ……。ちなみに言っとくけどお前には負けねぇ」
「何言ってんすか、こっちは現役っすよ」
スタートの合図がした。

