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「良かったね、聞きたいことちゃんと聞けたんでしょ?」
「……まぁ、まだ聞きたいことだらけだけど」
自転車の車輪の音、通り過ぎる人たちの気配。
すっかり寒くなった空気に、吐き出す息が白くなる。
美奈子のしている手袋とマフラーに、もう冬なんだと、改めて一緒に過ごした日々を思った。
「亮介、勝手に亮介の家のこと、聞いてごめんね」
「や、別に。どしたの急に」
「もしかしたら亮介は嫌がるかもって思ったんだけど、どうしても知りたくて……」
「そんなに俺のこと知りたくなっちゃったー?」
「――うん。あの子に負けたくないっていう気持ちだけで、亮介の気持ちなんて何も考えないで行動した……。最低だね、私……」
「美奈子?」
「送ってくれてありがと。ここでいいよ……。ばいばい」
声をかけることも、追い掛けることもさせないような別れの言葉に、ただ背中を見送った。
明日になれば、学校でまた会える。
そんなふうに考えて。
いつもと様子の違う美奈子に気付いていたのに――。