「なんで教えてくれなかったんだって思ってるだろ?悪かった。けど亮子がな、母親のことは何も教えないでほしいって言っててな」
「だとしても――っ」
「けどな、最期の時も変わらずそう言ったって、後から聞いてな……」
「実の子に憎まれるかもしれないって、わかっててもかよ……」
俺は、何度憎く思っただろう――。
俺を捨てた母親を。
「もしかしたら、そうして欲しかったのかもな。そうしないと自分がしたことをどう償っていいか、方法がわからなかったのかもしれないな……」
「でも――、」
「けど、亮子はお前を大切に思ってた。それだけは、確かだ。覚えていて欲しい。それから、亮子が出ていった原因が、俺のせいだってことも……」
「話して良かったのかよ、母さんは言ってほしくなかったんだろ……」
親父が笑う。
「亮介が知りたいと言ってきたら全て話す、って決めてたんだ、二人で。だから、いいんだよ」

