「それで、美奈子はなんでうちにいるの?」
「うん……。亮介のこと、知りに来たの」
湯気のたつ鍋の向こうで美奈子が笑った。
「俺のこと?」
「そう。たぶん、亮介も知りたかったことなんじゃないかな」
俺が知りたかったこと……。
咄嗟に顔を上げて親父を見る。
ビール片手に、すまなそうな笑みを浮かべた親父と目があった。
「親父、あのさ」
「すまん。こうややこしいことになるなら話しておくべきだったな……」
もう事情を知っているらしい美奈子は、食器片手に席を立った。
しばらくして水を流す音が聞こえてきた。
洗い物でもしてくれているらしかった。

