「ただいま……」
驚いたことに、家に明かりがついていた。
めずらしく親父が帰って来ているらしかった。
なんでこう、タイミング良く家にいるんだ。
いつも聞こうと思う時には、いなかったくせに。
なんで、今日に限って……。
「親父、帰ってんのー?」
靴を脱ぎながら視線を落として、そこに女物の靴があるのに気が付いた。
美奈子のお気に入りの靴。
「おかえり」
うちで聞くはずのない声。
「美奈子……?何してんの、うちで」
「デートは、楽しかった?」
冷ややかに一瞥される。
美人の冷たい瞳は、普段ならたまらなく好きなんだけど……。
とりあえず、それどころじゃない。
別にデートじゃないけど、なんで知ってるんだ……。
「何きょとんとしてんのよ。里奈ちゃんとデートだったんでしょ?」
だから、なんで……。

