足、早いなぁ。
マラソン大会、応援しよう。
「――マラソン大会、応援しよう。なんて考えてたり?」
「なっ!そんなこと考えてなんか、ないよ……」
「ま、いいけど。でもさ、美奈子と亮介じゃあ、なかなか素直になれないかもしれないけど、好きって気持ちはちゃんと伝えなきゃね」
……わかってる。
私の過去を知っても、それでもまだ私のことを好きだと言ってくれた。
あの真っ直ぐな気持ちに返事をするなら、私もきちんと誤魔化さないで伝えなきゃいけない。
「……うん。わかってる」
「よしっ。じゃあ次の授業教室移動だよ、ほら行こう」
「うん」
立ち上がった時、ふいに呼ばれた。
「佐藤ー!後輩が呼んでるー!」
後ろのドアの所。
女の子が一人いた。
一つ下の学年を表す緑のリボン。
大きな瞳にさらさらの髪。
近くの男子が騒いでる。
一つ下の学年で人気のある子。
苗字はわからない。
でも名前は知ってる。
確か、――りな。
いつだったか亮介が、そう呼んでた――。