「もう泣いてない?」
顔を上げて頷く。
じっと見つめてくる亮介の視線に耐えかねて、目を閉じた。
こんなんじゃ、キスしてって言ってるようなものなのに。
唇に重なった、さっきとは違う優しいキス。
“幸せ”って、きっとこんな気持ちなのかもしれない。
離れた唇を追うように亮介を見上げる。
「美奈子が嫌じゃなかったら、俺のこと、お試し恋愛じゃなくて本気で考えて。返事、いつでもいいから」
突然の言葉に、返事が出て来ない。
「昔話は終わりだよね?送るよ、行こう」
返事はしないまま、静かに頷くしかできなかった。