弱かった、あの頃―――。




いい思い出なんか、何もない。

無視されたり、靴やカバンを隠されたり、水とか砂とか掛けられたり。

どこにでもある、イジメ。
たまたまターゲットが私だったっていうだけの話・・・。


原因は全部、この容姿のせい。

親のいいところばかりをもらって生まれた私は、容姿に恵まれた。黒目がちな瞳も、小さな鼻も、口紅をひかなくてもいい唇も、癖のない髪も。
みんなに、羨ましがられる。

だけど、こんな容姿私は嫌いだ。

いいことなんか、ひとつもなかったから・・・。




「いじめられてたのは、知ってる。その理由も・・・」

「そっか」

「勝手に聞いて、ごめん」


沢藤に聞いたんだろうな。
でも・・・。


「でも、男の話は、知らないでしょ?さっきのアイツのこと」


亮介が頷いた。