「亮介のお父さん、やっぱり面白いね」
亮介パパのイタリア話を聞いたり、誕生日のお祝いとして写真を撮ってもらったりしてから、亮介の家を後にした。
いつも通り、自転車の横を歩きながら、家まで送ってもらう。
「ん?そう?まぁ面白いっつーか変わってる方だけど」
亮介は、亮介パパといる時は、少し可愛い。
いつもの落ち着きぶりは取り払われて少し幼くなる。
自転車のカゴで揺れてる袋の中に入ってるスノードームを思い出す。
――スノードームは綺麗だよね。ドームに守られて、ずっと綺麗なまま。中身には絶対に触れられないけどね。気に入ってるんだ、ドームの中の創られた世界がね。
そう言った亮介のお父さんに、他意はなかったんだと思う。
芸術を仕事にしてる人の観点からの話しだったんだろう。
でも、スノードームのその話は、自分を思い起こさせた。
亮介は何も知らない。
外側から見えるだけの私しか、きっと知らない。

