「どうもすみませんね...。

というか...あなた、杏の発作を知っているの?」




あんちゃん...生徒達には秘密にして欲しいって言ってたんだっけ。







「えと...まぁ、俺だけなんですけど...」



「そう。

学校での杏、どうかしら?」



ニコッとしたあんちゃんのお母さんは、あんちゃんの手を握って言ってきた。







「とても...楽しそうですよ。

友達もいるし、この間は遊びにも行きました。」






思いのまま、あんちゃんのお母さんに伝えると、嬉しそうな顔をするあんちゃんのお母さん。






「初めて出来た友達だから...嬉しいのね。」



...初めて?


中学や小学は...?



俺の思った事が顔に出ていたらしく、あんちゃんのお母さんが口を開いた。







「小中学は...行っていないの。
生まれてから入退院を繰り返してて...。

本当は、高校も不本意なんだけどね」


「そ、うだったんですか...」




あんちゃんの顔をもう1回見る。




こんなに小さい体に。


色々な葛藤を詰め込んでいるあんちゃん。



俺が、あんちゃんに集中してしまうのも
そのせい?



「俺...これで失礼します...」



「あっ、本当にありがとう。

これからも、杏をよろしくね?」



お辞儀だけして、俺は保健室を出た。









「あっ、大我!

なんで保健室に...?」



「具合悪いならさ、私の家に来たらいいよっ!

夕飯、作ったげる♡」



さっきまで一緒にいた女子達が腕に絡まる。



「ごめ、俺、帰るね」



今は あんちゃんの事でいっぱい。



引き止める女子達を無視して、俺は家に向かった。