「ねぇ………虚しいわよね。この世界。」

常磐はこの頃、こんな事をよく言うようになった。

「如何か、されたのですか?」

女房が、気がかりになって、常磐に問うた。

「最近ね………思うのよ。私が、もっと高い家格に生まれていたらって。」

「姫様?」

「さっき話した、琵琶の名手の藤一条の君のお邸はねぇ、とても家格高いから、何でも手に入れられるのですって。羨ましいわ。確か、仕えているのは、大将の姫君達ですってよ。私とは、比べ物にならないわ。」

常磐は哀しそうであった。