「あぁら?そうかしら?私はあまり、そうは、思わないわね。だって、琵琶の音は、美しいわ。癒される。」

「そうですわね………」

「それに、知らないの、お前。この京で琵琶の名手の姫君って言ったら。二人しかいないんだわ。」

「お二人、ですか?」

「ええ。一人は、この私。そして、もう一人は、一条の邸にお住まいの、藤一条の君ですって。私は、技巧で此方には、負けてしまうけれど。」

常磐は溜め息をついて、琵琶と撥を置いた。

「月を見て…………哀しく思ったわ。だから、寂しさを紛らわせたかったのかも、私。」