「まぁた、琵琶をお弾きになられてるのですね。姫様。」

呼ばれている姫は、常磐、琵琶を弾いている本人だ。

常磐、というのはこの姫の諱ではなく、常である。音は変わらない。普段は、呼ばれない。

「許して。だってねぇ、幼い頃から、弾きなれていて、私の、唯一無二の友人みたいな物だわ。」

常磐は琵琶を撫でながら、そう言った。

「そうですね。昔のことを思い出します。姫様がまだお小さい頃、撥を必死に握っておられたのを。」

「手習いを始めた頃のことね。懐かしいわ。」

「でも、琵琶は、女が弾くと格好があまりよろしくない、と言いますのよ。」