人がやらない仕事をやろう。
それが今の仕事をやろうと思った理由
だった。
山手通りが川越街道にさしかかった時にタクシーの運転手が、一言いった。

「この間の事件現場、この近くですよ」
「事件現場?」

「あれ?お客さん知らないのですか?
一週間前、新聞や
ニュースでやって
いたでしょ?」

「まさか・・・・・・・・」
栗山は、嫌な予感を感じた時には、
もうマンションに
到着していた。
タクシーを降りて、マンションの前で、依頼人に電話をした。
小柄の50すぎの
痩せた男性と40代後半の髪が長くて
小太りの女性が
現れた。
最初に男性が喋った。

「すみません、
こんな時間に・・・・・・・・・・こちらです。」
案内されて部屋に
向かった。最初は、暗くてわから
なかったけれど、
マンションの明かりでちらりと二人を
見ると全く生気が感じられなく、
疲れ果てた顔色
だった。
何かに取り付かれているような気もした。男は、ドアの前で、鍵を出してドアを開いた。
中は真っ暗で異様な空気が立ち込めている。まるで冷凍庫のような冷気が感じられた。
玄関先で靴を脱ごうとすると

「土足で結構ですよ」と男性が言った。