ある時に自宅に帰ると、誰もいなく、
台所のテーブルには、一枚の離婚届が
あった。
金で何とかなると浅はかに思っていたのだった。
不運は続くもので
、連日の接待の酒で身体を壊して
しまったのだ。
それがきっかけで
会社を退職した。
全てを失った栗山は、やはり考える事は皆、同じであり、死を選ぶようになった。最後に向かった
先は、青木が原の
樹海であった。
たまたまその時に
乗ったタクシー
運転手の言葉に
助けられた。
「私もいろいろ
ありました。
けど生きていたら
良い事もありますよ。終わらすのは簡単です。でも苦しい
けど続けていけば
必ず良い事も
あります。
自分の人生を生かすも殺すも自分です。やり直しは、いくらでもききますから、生きてください。
生きているから痛みや苦しみが味わえるのです。それを超えると必ず春が来ますよ!」

ありふれた単純な
言葉だが、見事に
ボディ・ブローに
効いた。

「俺は、生かされているのだ。」

自分でマイナスに
追い込んできたから、どうしても死しか考えられなかった。今度は、生きる事をと思った時、身体の中から活気が
出てきたのである。自分の事ばかり
思っている自分が
恥ずかしかった。

「今度は、人の為に生きよう」