羽柴の瞳は深刻さを持ったまま細められ淡々とした口調でそのまま話を続けられる。それはシノミヤ自身も受け入れたくはない物だった。





「通常の人間は壊死した細胞が移植もなく復活するなんて事はありません。既に死滅した細胞自身が蘇るなんて症例は私は知りません」




「あいつは……ナツは普通じゃねえって事か?もしかして、ハーフタイプ……」




「いえ、ハーフタイプとは考え難いです。ハーフタイプは壊死しにくい強靭な体を作る事が前提ですが、壊死してしまえば通常の人間同様使えなくなります。ですが、ナツキ君の場合はまったく別物です。人間の様に簡単に壊死するものの、再生する能力があるのですから」





「……まさか、第二形態人種(セカンドタイプ)だって言いてえのかよ、あんた!」




「……分かりません。我々の知るセカンドタイプは人格が無い。ですが、ナツキ君はちゃんとナツキ=ノースブルグとして生活しています。自身が巻き込まれた学生であるという記憶も存在しています。それは、今までのセカンドタイプには絶対に無い症例でした」




「だったらあいつは……ただの人間……」




「本当に、そう思いますか?シノミヤ君は、そう言い切れますか?」





羽柴の問いかけにシノミヤは言い切る事が出来なかった。
現に、ナツキの足は回復していた。それは自身が握ったことによるナツキの反応で直ぐに分かった。






ナツキは<痛がった>のだ。

通常壊死をしていれば、その感覚はなく無反応で終わるはずだった。



しかし、彼の足は痛みを感じる事が出来る程に回復している。



良い事なのかもしれない、それでも手放しで喜べる状況ではない事も理解していた。




「シノミヤ君、私は西部支所とも連絡を取ろうと思います。ナツキ君の事も調べるには彼らの協力も必要となるでしょう」




「あんたの好きにしろよ」




それだけを羽柴に伝えていた。西部支所の人間が来る……。その事実もまたシノミヤの中に重くのしかかっていた。