「さて、今後の予定なんですけどね。私、ナツキ君にもお仕事を手伝って貰えるように準備をさせて頂きました。聞いてますか?ナツキ君」





「聞いへまふよ……いった!」





救急セットの消毒液付ガーゼで手当てを受けているナツキは不機嫌そうに返事を返す。





自然災害よりも理不尽なのではないかと言う想いもあったが、手当てしてくるノアの顔が心配そうに見つめてくる為に、言い出し辛い。






それに、少しこの距離感は役得ではないか、とすら感じてしまう自分自身の間抜けさ加減をナツキは呪いたくなった。






「手伝うって……シェルズ・コアの破壊って事ですよね?嫌ですよ、俺」





「そうですか。残念です……これからの人生性犯罪者としてのレッテルを背負って生きていくんですね。嘆かわしい……」





よよよ……としなりをわざとらしく作りながら、嘆く小芝居を入れてくる。




ノアを押し倒した様に写る携帯の写真と、どこに仕込んでいたのか、ボイスレコーダーの再生ボタンを押す。





「ノア、大人しく……いててて!大人しくしてって!」





パチリと音声を切ると微かな微笑みを浮かべている。



最悪な証拠品のオンパレードである。全てはでっち上げだが、それを証明する手段はナツキには無いのだ。





「やり方が汚い!」



「ふふふ。何とでもおっしゃって下さいな。ナツキ君を私はお救いしたいのですよ」




全ては目の前の狐男の計算内という訳らしい。もしかしたら、ノアをナツキの部屋に向かわせたのも羽柴の仕業なのだろうか?






ノアの方に視線を向けたが、話の流れ自体分かってなさそうに小首をかしげている。





間違いない。ノアは勝手にやって来たのだろう、作戦に乗る事が出来る程に頭が追い付いてきていないらしい。


知能的には残念な子だったな、そういえば。





「どうされます?ナツキ君」


「……やりますよ。やれば良いんでしょう!」


「そうですか。それは有り難い、ご協力感謝します」




最初からそのつもりだったにも関わらず、羽柴は恭しく頭を下げる。




顔を上げた彼は、満足そうな微笑みを浮かべて提案を出した。





「それでは、ナツキ君の実力を試す模擬戦でもしましょうか」




「「は?」」





余りの唐突な発言にナツキとシノミヤは、ハモって疑問の言葉を口にした。