私。たしか、お祭り会場で具合が悪くなって倒れて......。
その時に、倒れかかった私を誰かが抱きとめてくれて......。
意識が朦朧として、うっすらとしか覚えていない記憶を必死で辿りながら、現状を把握しようとしている私に広務さんが優しく聞いてきた。
「気分はどうですか?」
「はい。大丈夫です......」
気が付けば、ここは広務さんの車の中で。クーラーがしっかり効いていて、先ほど体に感じた”だるさ”も熱も、すっかり引いていた。
そうか、倒れかかった私を、あの時抱きとめてくれたのは広務さんだったんだ。
私が意識を失う前に。虚ろな目に飛び込んで来た、あの一面肌色の景色は広務さんに、しっかりと抱き上げられて密着した彼の胸元が私の目に映ったんだ。
彼の腕の中の安心感と言ったら、まるで生まれたての赤ん坊が母親の胸に抱かれているみたいに。少しの緊張も気負いもなくて、手放しで全てを預けられる程の優しさと温かさだった。
そして、安心した私は深い眠りに落ちた。
あれから、どれくらいの時間が経ったんだろう?
今日は、せっかくのデートを私のせいで台無しにしてしまった......。
ーー広務さんに申し訳ない......。
平日、夜遅くまで仕事に追われている彼の貴重な休日を、今日は私との時間に使ってくれたというのに。
次第に意識がはっきりとしてきて、フロントガラスの外に目を当てれば。ついさっきまで、あんなに青々としていた空が、今はオレンジ色に染まっている。
地平線に限りなく近づいた太陽を眺めて、自分が随分と長い間広務さんそっちのけで眠り呆けていた事に、私は激しい自己嫌悪に陥った。
せめてここは。もう手遅れかもしれないけれど、心から彼に謝りたい......。
「広務さん、今日は本当にすみません......。とんだ、ご迷惑をおかけして......」
私はシートから身体を起こして彼の方に向き直り、目線を下に向けて覇気なく謝った。
彼は今どんな気持ちでいるのだろう?
それを考えるのが怖い。
でも、明らかに。私みたいな、こんな迷惑しか掛けないような女は広務さんの傍に居ない方がいい......。
「いいえ、謝るのは俺の方です。優花さんの体調も考えずに、どんどん先に進んで行ってしまって本当にすみません......。それと、今日の俺のメインイベントは、優花さんに会うことですから。花火は、ただのオプションです。でも、花火が好きだと言った優花さんに、どうしても見せたくて。だから、目の前ではないですが花火が良く見えるこの場所に来ました」
その時に、倒れかかった私を誰かが抱きとめてくれて......。
意識が朦朧として、うっすらとしか覚えていない記憶を必死で辿りながら、現状を把握しようとしている私に広務さんが優しく聞いてきた。
「気分はどうですか?」
「はい。大丈夫です......」
気が付けば、ここは広務さんの車の中で。クーラーがしっかり効いていて、先ほど体に感じた”だるさ”も熱も、すっかり引いていた。
そうか、倒れかかった私を、あの時抱きとめてくれたのは広務さんだったんだ。
私が意識を失う前に。虚ろな目に飛び込んで来た、あの一面肌色の景色は広務さんに、しっかりと抱き上げられて密着した彼の胸元が私の目に映ったんだ。
彼の腕の中の安心感と言ったら、まるで生まれたての赤ん坊が母親の胸に抱かれているみたいに。少しの緊張も気負いもなくて、手放しで全てを預けられる程の優しさと温かさだった。
そして、安心した私は深い眠りに落ちた。
あれから、どれくらいの時間が経ったんだろう?
今日は、せっかくのデートを私のせいで台無しにしてしまった......。
ーー広務さんに申し訳ない......。
平日、夜遅くまで仕事に追われている彼の貴重な休日を、今日は私との時間に使ってくれたというのに。
次第に意識がはっきりとしてきて、フロントガラスの外に目を当てれば。ついさっきまで、あんなに青々としていた空が、今はオレンジ色に染まっている。
地平線に限りなく近づいた太陽を眺めて、自分が随分と長い間広務さんそっちのけで眠り呆けていた事に、私は激しい自己嫌悪に陥った。
せめてここは。もう手遅れかもしれないけれど、心から彼に謝りたい......。
「広務さん、今日は本当にすみません......。とんだ、ご迷惑をおかけして......」
私はシートから身体を起こして彼の方に向き直り、目線を下に向けて覇気なく謝った。
彼は今どんな気持ちでいるのだろう?
それを考えるのが怖い。
でも、明らかに。私みたいな、こんな迷惑しか掛けないような女は広務さんの傍に居ない方がいい......。
「いいえ、謝るのは俺の方です。優花さんの体調も考えずに、どんどん先に進んで行ってしまって本当にすみません......。それと、今日の俺のメインイベントは、優花さんに会うことですから。花火は、ただのオプションです。でも、花火が好きだと言った優花さんに、どうしても見せたくて。だから、目の前ではないですが花火が良く見えるこの場所に来ました」


