しっかりと繋がれた手に釘付けになっていた私は、頭上から聞こえた彼の声にハッとして顔を上げた。
「人ごみに紛れて、俺達が逸れてしまわないように......」
私と目が合うと。彼はそう言って繋いだ手に、より力を込めた。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい......」
こんなに暑い日なのに、彼にいくら手をギュッと握られても全く暑苦しくはない。むしろ、私の手をすっぽりと包み込む彼の大きな手の温もりと、歩調に合わせて揺れる手から伝わってくる彼の指先の感触には絶大な癒し効果があり、私が車内で感じた一抹の不安も、切なさも、胸の痛みも、全て跡形もなく消し去った。
彼と触れ合うまで、あれほど不埒な妄想に身悶えていた私は今は、まるで借りてきた猫のように大人しくなり。ただただ彼と手を繋いでいることが嬉しくて、半歩先を行き人波をかき分けながら私をリードして歩く彼の広い背中を黙って見つめていた。
あまりにも私が静かなことが、広務さんは気にかかったようで。様々な店が軒を連ねる屋台の区画に入る前に、私に聞いてきた。
「なんだか、とても静かですけど......。優花さん、もしかして具合悪いですか?」
広務さんは私がずっと黙ったままでいるのは、具合が悪いからだと思ったようだ。
決して、体調など悪くはない。むしろ広務さんに手を繋がれて、これ以上気分が良いことなんてない。
「いえっ!体調は全然大丈夫ですっ!すごく元気ですっ!」
私は、彼にあらぬ誤解を与えないように執拗に、はしゃいで見せた。
「それなら良かった......。でも、この暑さじゃ、熱中症にかかってもおかしくはないです。具合が悪くなったら無理しないで、すぐ教えてください。俺、そこで何か冷たい飲み物買ってきます」
広務さんは私を近くのベンチに座らせると、人波で溢れかえる屋台の区画に入っていった。
私は、どこまでも真摯に気遣ってくれる彼の優しさを受け止めながら、静かに彼を待った。
しばらくすると視界に影ができたので、きっと広務さんが戻ってきたのだろうと思い顔を上げた。
「人ごみに紛れて、俺達が逸れてしまわないように......」
私と目が合うと。彼はそう言って繋いだ手に、より力を込めた。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい......」
こんなに暑い日なのに、彼にいくら手をギュッと握られても全く暑苦しくはない。むしろ、私の手をすっぽりと包み込む彼の大きな手の温もりと、歩調に合わせて揺れる手から伝わってくる彼の指先の感触には絶大な癒し効果があり、私が車内で感じた一抹の不安も、切なさも、胸の痛みも、全て跡形もなく消し去った。
彼と触れ合うまで、あれほど不埒な妄想に身悶えていた私は今は、まるで借りてきた猫のように大人しくなり。ただただ彼と手を繋いでいることが嬉しくて、半歩先を行き人波をかき分けながら私をリードして歩く彼の広い背中を黙って見つめていた。
あまりにも私が静かなことが、広務さんは気にかかったようで。様々な店が軒を連ねる屋台の区画に入る前に、私に聞いてきた。
「なんだか、とても静かですけど......。優花さん、もしかして具合悪いですか?」
広務さんは私がずっと黙ったままでいるのは、具合が悪いからだと思ったようだ。
決して、体調など悪くはない。むしろ広務さんに手を繋がれて、これ以上気分が良いことなんてない。
「いえっ!体調は全然大丈夫ですっ!すごく元気ですっ!」
私は、彼にあらぬ誤解を与えないように執拗に、はしゃいで見せた。
「それなら良かった......。でも、この暑さじゃ、熱中症にかかってもおかしくはないです。具合が悪くなったら無理しないで、すぐ教えてください。俺、そこで何か冷たい飲み物買ってきます」
広務さんは私を近くのベンチに座らせると、人波で溢れかえる屋台の区画に入っていった。
私は、どこまでも真摯に気遣ってくれる彼の優しさを受け止めながら、静かに彼を待った。
しばらくすると視界に影ができたので、きっと広務さんが戻ってきたのだろうと思い顔を上げた。


