真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

”好き”

突如、頭の中にこだました彼からの夢のような言葉に、私の胸はドキッとあからさまに反応した。

「あのっ、広務さんっ.....。それって、どういう......」

彼の真意を知りたい。

私はその一心で、彼に声をかけた。

でも、最後の一言がどうしても言えなかった。

彼は、そんな中途半端な私の発言を聞き返すことはなかった。

だた、僅かに口元が緩み口角が上がったのは気のせいだろうか?

私が言葉を噤んだあと、少し間が空いて彼が言った。

「あと20分くらいで着きます」

「......あっ、はい.......」

”好き”と言った彼の真意を確かめたいのに。

結局、核心に迫ることができなかった私は、フロントガラスの外に広がる彼の故郷をひたすら瞼に焼き付けた。

遠くに緑の山を望む広い道路が敷かれた、その街は古い建物と新しい建物が混在して都会とは又違った賑わいを作り出していた。

新進の外資系スーパーや大手レンストランチェーンに挟まれて、ひっそりと佇む老舗の製菓店や昔ながらの商店を見つける度に、私の知らない彼の記憶がそこに宿っているような気がして胸がキュゥッと鳴いた。

子供の頃の彼は、一体どんな男の子だったのだろう?

この街で、どういう風に育ってきたんだろう?

知るよしもない幼い頃の彼の面影に思いを馳せて運転席に目を向けると、そこには助手席に私を乗せて真剣に車を運転している彼の横顔があって、私はすっかり大人になり故郷の街を車で駆け抜けている彼のことを、たまらなく愛しく思った......。


「もう、着きますよ」

私の視線に気がついた彼は微笑みながらそう言って、左にウィンカーを出して速度落としながら、ゆっくりと車線を変更した。

そして、5分ほど走行したのち、赤文字で臨時駐車場と書かれた大きな看板が見えてきて、案内表示の通りに進んで行くと無事に目的地に到着した。