母と再会を果たしてから約一年、彼と夫婦になって約半年。
私は今、ニューヨークの高層マンションで新米主婦として毎日を送っている。
遠く離れた日本での日々は、遥か昔の出来事のように記憶がうっすらと感じる。
幼い頃の母恋しさ、かつての職場、不器用な恋愛......全てが夢物語のよう。
「”新CEOのジークフリート・モルガン氏が結婚”......」
今日のニューヨークペーパーのトップニュースは、世界的都市ニューヨークの中でも、一等地に本社を構えるモルガン財閥のCEOの結婚。
「何、そんなに真剣に読んでるの? あっ......、もしかして」
リビングのソファに腰掛けて記事に目を通していた私に夫が茶々を入れてきた。
「もしかしてって、何?」
夫が言わんとしていることは分かってる。でも、あえて夫の口から言わせたい私。
「逃した魚は大きすぎたって思ってんじゃないの〜?」
「ああっ、ほんっと。今頃私、超大金持ちの社長夫人だったかも〜!!」
日本を発って以来、ジークとの連絡は途絶えた。以降、彼がどんな人生を過ごして来たかは知る由もなかった。
少なくともジークは、母と私の再会、夫と私の縁を後押ししてくれた恩人であることは間違いない。
今、私は彼に感謝している。
彼には、この先も。あえて声をかけることはない。けれど、今日の一報を知って私は心から彼に祝福を贈っている。
「何、センチメンタルな顔してるんだよ? 俺と結婚したこと今更後悔したって遅いよ。だって......」
昔話に浸って少しだけ懐かしさを覚えた私をからかって、夫が”じーっ”と、顔を覗き込んできた。
そういうイタズラな夫に至近距離で目を合わせる私。
私と目が合った夫は途端に、とてつもなく優しい顔をした。
「だって俺達は、もう二人きりの夫婦じゃないんだから......」
「うん。ふふふっ」
思わず笑みが溢れる。
今日の空は雲一つない快晴で、カーテンから洩れる昼下がりの柔らかな日差しがとても綺麗。
少しだけ開けた窓から、そよそよと吹く風が白いカーテンを揺らしている。
フカフカのソファにもたれながらカーテンの波を眺めて、傍には最愛の人。
幸せの源が、ここにーー。
私はそう感じて、そっとお腹に手をあてた。
end.
私は今、ニューヨークの高層マンションで新米主婦として毎日を送っている。
遠く離れた日本での日々は、遥か昔の出来事のように記憶がうっすらと感じる。
幼い頃の母恋しさ、かつての職場、不器用な恋愛......全てが夢物語のよう。
「”新CEOのジークフリート・モルガン氏が結婚”......」
今日のニューヨークペーパーのトップニュースは、世界的都市ニューヨークの中でも、一等地に本社を構えるモルガン財閥のCEOの結婚。
「何、そんなに真剣に読んでるの? あっ......、もしかして」
リビングのソファに腰掛けて記事に目を通していた私に夫が茶々を入れてきた。
「もしかしてって、何?」
夫が言わんとしていることは分かってる。でも、あえて夫の口から言わせたい私。
「逃した魚は大きすぎたって思ってんじゃないの〜?」
「ああっ、ほんっと。今頃私、超大金持ちの社長夫人だったかも〜!!」
日本を発って以来、ジークとの連絡は途絶えた。以降、彼がどんな人生を過ごして来たかは知る由もなかった。
少なくともジークは、母と私の再会、夫と私の縁を後押ししてくれた恩人であることは間違いない。
今、私は彼に感謝している。
彼には、この先も。あえて声をかけることはない。けれど、今日の一報を知って私は心から彼に祝福を贈っている。
「何、センチメンタルな顔してるんだよ? 俺と結婚したこと今更後悔したって遅いよ。だって......」
昔話に浸って少しだけ懐かしさを覚えた私をからかって、夫が”じーっ”と、顔を覗き込んできた。
そういうイタズラな夫に至近距離で目を合わせる私。
私と目が合った夫は途端に、とてつもなく優しい顔をした。
「だって俺達は、もう二人きりの夫婦じゃないんだから......」
「うん。ふふふっ」
思わず笑みが溢れる。
今日の空は雲一つない快晴で、カーテンから洩れる昼下がりの柔らかな日差しがとても綺麗。
少しだけ開けた窓から、そよそよと吹く風が白いカーテンを揺らしている。
フカフカのソファにもたれながらカーテンの波を眺めて、傍には最愛の人。
幸せの源が、ここにーー。
私はそう感じて、そっとお腹に手をあてた。
end.


