彼が私を連れて来た場所。そこは、母のいるビルではなく。ここニューヨーク発祥の格式高い世界的ジュエリーブランドの本店だった。
『かしこまりました』
店頭で彼の言葉を受け取ったジュエリーアドバイザーは上品に微笑むと、そそくさと店の奥へと消えていった。
そんな彼女を呆然と見送り、ふと我に帰ると事の重大さに気がついた。
「ねっ......ねぇ、広務さん......」
彼のスーツの袖を掴みながら恐る恐る声をかけた。
「なに?」
”なに”って、何でそんな優しい笑顔で平然と答えられるの!?
「けっ、結婚指輪って......!」
「俺はすでに優花へのプロポーズは済んでるし、あの時の気持ちのまま今も君を愛し続けてる。結婚したいって想いは変わっていない」
真摯に語る広務さん。そんな彼を見つめていると、むしろ悪戯に慌てふためいている私の方が軽率な気がしてきた......。
「婚約指輪の次は結婚指輪だろう?」
”結婚”私、彼とそうなりたくてニューヨークに来た。
でも、なんていうか......。胸がドキドキし過ぎて言葉が出ない。
私、広務さんを愛してる。その気持ちはさっき伝えた。
広務さんも、私を愛してくれてる。
いいんだよねーー。
「......うん」
今この瞬間、彼の想いの全てを受け入れる。
そういう気持ちを込めて、真っ直ぐに広務さんの瞳を見つめて頷いた。
私の決意を受け取った広務さんは”ふぅ”と、肩の力を抜き安堵した笑顔を見せた。
彼はいつだって冷静。こんなドタンバな展開だって、余裕に対応してると思ってたのに、一瞬ホッとした表情を見せた彼に余計に愛おしさを感じる......。
『お待たせしております』
しばらく場を離れていたアドバイザーが結婚指輪を手にして私達のところへと戻ってきた。
この頃には、さっきとは打って変わって、私はすっかり落ち着きを取り戻していた。
「キレイ......。素敵」
接客用の特設コーナーへと案内されて、ソファに座って眺めた指輪にはキラリと大粒のダイヤモンドが光っていた。
『こちらで5カラットになります。クラリティはVVS。もちろん、カラット、クラリティともお客様のご希望に沿ってカスタマイズ可能です』
「うわぁ......っ」
今までに見たこともないカラットの最高クラスのダイヤモンドの美しさに、ただただ見惚れるばかり。
恋心にも似たようなため息を漏らしながら、ひたすら鑑賞する私の隣で、それまで沈黙を貫いていた彼がついに口を開いた。
「気に入った?」
広務さんはそう言って私の右手を優しく握った。
「うん。素敵、とても......!」
「そう、じゃぁ......」
「うん?」
『彼女に、この指輪を』
『かしこまりました』
店頭で彼の言葉を受け取ったジュエリーアドバイザーは上品に微笑むと、そそくさと店の奥へと消えていった。
そんな彼女を呆然と見送り、ふと我に帰ると事の重大さに気がついた。
「ねっ......ねぇ、広務さん......」
彼のスーツの袖を掴みながら恐る恐る声をかけた。
「なに?」
”なに”って、何でそんな優しい笑顔で平然と答えられるの!?
「けっ、結婚指輪って......!」
「俺はすでに優花へのプロポーズは済んでるし、あの時の気持ちのまま今も君を愛し続けてる。結婚したいって想いは変わっていない」
真摯に語る広務さん。そんな彼を見つめていると、むしろ悪戯に慌てふためいている私の方が軽率な気がしてきた......。
「婚約指輪の次は結婚指輪だろう?」
”結婚”私、彼とそうなりたくてニューヨークに来た。
でも、なんていうか......。胸がドキドキし過ぎて言葉が出ない。
私、広務さんを愛してる。その気持ちはさっき伝えた。
広務さんも、私を愛してくれてる。
いいんだよねーー。
「......うん」
今この瞬間、彼の想いの全てを受け入れる。
そういう気持ちを込めて、真っ直ぐに広務さんの瞳を見つめて頷いた。
私の決意を受け取った広務さんは”ふぅ”と、肩の力を抜き安堵した笑顔を見せた。
彼はいつだって冷静。こんなドタンバな展開だって、余裕に対応してると思ってたのに、一瞬ホッとした表情を見せた彼に余計に愛おしさを感じる......。
『お待たせしております』
しばらく場を離れていたアドバイザーが結婚指輪を手にして私達のところへと戻ってきた。
この頃には、さっきとは打って変わって、私はすっかり落ち着きを取り戻していた。
「キレイ......。素敵」
接客用の特設コーナーへと案内されて、ソファに座って眺めた指輪にはキラリと大粒のダイヤモンドが光っていた。
『こちらで5カラットになります。クラリティはVVS。もちろん、カラット、クラリティともお客様のご希望に沿ってカスタマイズ可能です』
「うわぁ......っ」
今までに見たこともないカラットの最高クラスのダイヤモンドの美しさに、ただただ見惚れるばかり。
恋心にも似たようなため息を漏らしながら、ひたすら鑑賞する私の隣で、それまで沈黙を貫いていた彼がついに口を開いた。
「気に入った?」
広務さんはそう言って私の右手を優しく握った。
「うん。素敵、とても......!」
「そう、じゃぁ......」
「うん?」
『彼女に、この指輪を』


